メジャーリーグのMVPには、およそ100年の歴史があります。
その長い歴史で、4回以上受賞した選手は2人しかいません。
ひとりは、通算762本塁打のバリー・ボンズさん。
もうひとりが、大谷翔平さんです。
「で、結局何回獲ったんだっけ?」
「満票ってよく聞くけど、何がそんなにすごいの?」
ニュースで受賞の文字を見るたび、そんな疑問が浮かんだことはないでしょうか?
この記事では、大谷さんのMVP受賞歴を、回数・仕組み・各年の物語・2026年の可能性まで、野球にくわしくない方にも分かるようにやさしく整理します。
大谷翔平のMVPは何回?結論は通算4度で歴代単独2位

まず結論からです。
大谷さんのMVP受賞は、通算4度。
これはボンズさんの7度に次ぐ、歴代単独2位の記録です。
内訳は次のとおりです。
- 2021年 ア・リーグMVP(エンゼルス)
- 2023年 ア・リーグMVP(エンゼルス)
- 2024年 ナ・リーグMVP(ドジャース)
- 2025年 ナ・リーグMVP(ドジャース)
2023年からは3年連続での受賞です。
そして報道によると、この4度はすべて「満票」での受賞とされています。
初めてこの事実を確認したとき、筆者は数字を二度見しました。
4回獲ったことよりも、4回とも満票だったことのほうが、実はずっと異常だからです。
どれほど珍しい領域なのか、比べてみましょう。
マイク・トラウトさんやアルバート・プホルスさんのような歴史的名選手でも、MVPは3度です。
ミッキー・マントルさんやジョー・ディマジオさんら往年の大スターたちも、3度で止まっています。
つまり「3度」が超一流の最高ラインで、その上の景色を知っているのは、ボンズさんと大谷さんのふたりだけなのです。
「満票」とは何か|30人が全員同じ名前を書くということ
満票とは、投票権を持つ記者全員が、1位票に同じ選手の名前を書くことです。
筆者は前職で6年間、記者として投票や賞の現場の空気を吸ってきました。
記者というのは、ひねくれ者の集まりです。
「みんなが選ぶ選手をあえて外して、自分だけの視点を示したい」という誘惑が、常にあります。
その30人が、誰ひとり逆らわずに同じ名前を書く。
それが1回ではなく4回続く。
あなたの職場で、全員の意見が完全に一致した会議は、これまで何回あったでしょうか?
満票の異常さは、この想像をしてみると体感できます。
しかも大谷さんは、その全員一致を敵地の担当記者からも引き出し続けています。
ひいきのチームを応援する読者を持つ記者ですら、名前を書かざるを得ない。
満票とは、数字が人の立場を超えた瞬間の記録なのです。
MVPは誰がどう選ぶ?投票の仕組みをやさしく解説

MVP(最優秀選手賞)は、全米野球記者協会の記者による投票で決まります。
ア・リーグとナ・リーグでそれぞれ30人の記者が、1位から10位までの選手を順位をつけて記入します。
1位票ほど高いポイントが与えられ、合計ポイントがいちばん多い選手が受賞します。
ポイントの配分は1位票が14点、2位票が9点、以下8点、7点と続き、10位票の1点まで割り振られます。
1位票だけ突出して重いのは、「誰を頂点に置くか」という意思をはっきり示させるためです。
満票、つまり30人全員の1位票を集めると、420点満点になります。
対象になるのはレギュラーシーズンの成績で、ポストシーズンの活躍は含まれません。
投票はシーズン終了直後に締め切られ、発表は例年11月です。
「じゃあ、優勝チームの選手が有利なの?」
そう思った方は、いい勘をしています。
チームの勝敗をどこまで重視するかは記者ごとの判断に委ねられていて、ここが毎年の論争の種になります。
だからこそ、議論の余地なく全員が同じ名前を書く満票には、特別な重みがあるのです。
MVPとサイ・ヤング賞の違い
よく混同されるのが、サイ・ヤング賞との違いです。
サイ・ヤング賞は「投手だけ」を対象にした賞で、MVPは野手も投手も含めた全選手が対象です。
投打二刀流の大谷さんは、理屈のうえでは両方の候補になり得る、史上でもきわめて珍しい存在です。
2026年の投手・大谷さんの評価については、サイ・ヤング賞を獲れるのかを解説した記事でくわしく整理しています。
大谷翔平のMVP受賞歴をふり返る|4度それぞれの物語

同じMVPでも、4度の中身はまったく違います。
ひとつずつ見ていきましょう。
2021年・2023年|エンゼルス時代のア・リーグMVP
2021年は、二刀流が本当に通用すると世界が知った年です。
打者として46本塁打、投手として9勝。
100年前の伝説、ベーブ・ルースさんと比べられる存在が、現実に現れました。
筆者はあの秋、初受賞の発表をテレビの前で見ながら、ひとりで拍手をしていました。
この年は打っても100打点、走っても26盗塁と、二刀流どころか「三刀流」のような1年でした。
2023年は、日本人選手として初めて本塁打王(44本)を獲り、投手としても10勝。
2年連続で「2桁勝利と2桁本塁打」を同時に達成し、シーズン終盤に右肘のけがを抱えながらの受賞でした。
痛みと引き換えに積み上げた44本だったと思うと、筆者は今でもこの年の受賞がいちばん胸に迫ります。
注目したいのは、この2年のエンゼルスがポストシーズンに進めなかったことです。
チームが勝てない年でも、記者全員が1位票を投じた。
「チームの成績も込みで選ばれる賞」という常識を、個人の内容でねじ伏せた受賞でした。
2024年・2025年|ドジャース時代のナ・リーグMVP
2024年は、移籍1年目にして、肘の手術明けで一度も投げなかった年です。
「二刀流じゃない大谷は、ただの強打者では?」
そんな見方を、54本塁打と59盗塁、史上初の「50本塁打・50盗塁」で吹き飛ばしました。
守備につかない指名打者としての受賞は、史上初とされています。
50本塁打・50盗塁を達成した夜、筆者はメモ帳に「怪物」とだけ書いて寝ました。
翌朝それを読み返して、語彙を失っていた自分に笑いました。
投げられないなら、走る。
あの年の大谷さんに、筆者は「奪われた武器を嘆かず、新しい武器を作る人」という生き方を見ました。
しかもこの年は、移籍1年目のチームが世界一になった年でもあります。
個人の賞とチームの頂点を、同じ秋にまとめて手にしました。
そして2025年は、二刀流復活の年。
報道によると、自己最多の55本塁打にリーグトップのOPS1.014、メジャー最多の146得点。
投手としても14試合に登板して防御率2.87と、投打の両輪が戻りました。
ここで、ひとつ立ち止まってみてください。
実は、連続受賞には隠れた敵がいます。
「慣れ」です。
記者は驚きに票を入れます。
同じ人が勝ち続けると、「もう見た」という空気が必ず生まれます。
それでも満票が続いたのは、大谷さんが毎年「去年とは違う形の驚き」を用意し続けたからです。
MVPの数は、才能の証明ではなく、去年の自分を超えた回数。
筆者はそう解釈しています。
大谷翔平は2026年もMVPを獲れるのか|前半戦の数字と後半戦のカギ

では、今年はどうでしょうか?
報道によると、2026年前半戦の大谷さんは22本塁打で、投手として8勝、防御率1.79。
チームも61勝36敗と、両リーグ最高勝率で折り返しました。
もし今年も受賞すれば、4年連続・通算5度目。
4年連続は、2001年から2004年のボンズさんしか成し遂げていない領域です。
さらに筆者がひそかに楽しみにしているのは、もうひとつ上の議論です。
もし後半戦も投打の両方で圧倒的な数字を積み上げたら、MVPとサイ・ヤング賞のダブル受賞という、前人未踏の話が現実の論点になってきます。
投手だけの賞と全選手の賞を、同じ年に同じ人が獲る。
文字にするだけで、少し笑ってしまう規模の話です。
ただ、MVPはシーズン全体を見て決まる賞です。
今は左膝の回復を優先して登板を待つ時期で、後半戦にどれだけ投打の両輪をそろえ直せるかがカギになります。
直近の状況は後半戦の登板見通しの記事とDH復帰の記事で追いかけています。
ネットでは、こんな趣旨の声が上がっています。
「もう受賞が驚きじゃなくなってるのが一番の驚き」
「満票を止められる人間がいるとしたら本人だけ」
「野球に興味なかったのに、11月の発表だけは毎年見てしまう」
最後の声、よく分かります。
筆者も毎年、11月の発表日にはカレンダーに小さく丸をつけていて、その日の夕飯は決まって手抜きになります。
あなたにも、そんな「毎年の楽しみ」になっている瞬間はないでしょうか?
よくある質問
日本人でMVPを獲った選手はほかにいますか?
います。
2001年にイチローさんが、メジャー1年目でア・リーグMVPを受賞しています。
日本人の受賞者はイチローさんと大谷さんの2人です。
MVPの最多受賞は誰ですか?
バリー・ボンズさんの7度です。
2001年から2004年の4年連続受賞を含みます。
大谷さんの4度は、それに次ぐ歴代単独2位です。
受賞を逃した年はあるのですか?
あります。
2022年は投手として15勝、打者として34本塁打という歴史的な二刀流成績を残しながら、62本塁打でア・リーグ記録を更新したジャッジさんに譲って2位でした。
あの年の「どちらがMVPか」論争は、いまだに語り草です。
ワールドシリーズMVPとは違うのですか?
別の賞です。
この記事で扱ったのはレギュラーシーズンのMVPで、ワールドシリーズMVPは秋の頂上決戦での最優秀選手に贈られます。
昨年のワールドシリーズMVPは山本由伸さんでした。
まとめ|4度のMVPは「更新の回数」
大谷さんのMVPは通算4度、歴代単独2位。
そして報道によると、4度すべてが満票です。
二刀流の証明、本塁打王、50-50、二刀流の復活。
ひとつとして同じ形の受賞がありません。
去年の自分を、毎年違う方法で超えていく。
その回数が、たまたまトロフィーの数になっているだけなのだと思います。
思えば、初受賞から5年。
「二刀流は無理だ」という声を実力で黙らせ、けがのたびに新しい形で帰ってきました。
私たちは今、100年後の野球ファンがうらやむ時代に立ち会っています。
今年の11月、私たちはまた新しい形の驚きを見られるのでしょうか?
その答え合わせまでの数か月を、後半戦の一球一球と一緒に楽しみましょう。
11月の発表の夜に「今年はこの記事の続きを書けるね」と笑えるように、筆者も追いかけ続けます。
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ところで最近、YouTubeで歴代の受賞の瞬間をまとめた動画を見つけて、時間を忘れて見入ってしまいました。
2021年の初受賞と2025年とでは、発表を聞く表情がまるで違うんです。
初々しい驚きが、静かな確認に変わっていく。
4年分の成長を表情だけで見比べられるのは、ファンのぜいたくですよね。
11月のそわそわを思い出したい方は、ぜひのぞいてみてください。
▶ 大谷一本【日米野球】 https://www.youtube.com/@OHTANI-IPPON/

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